Blog鍼灸とは、「途絶えさせず継承される医療の型」を鍼灸師が伝えます。

2024-10-09

  • 東洋医学
  • 鍼灸
鍼灸とは、「途絶えさせず継承される医療の型」

こんにちは。兵庫県明石市の二天堂魚住鍼灸院院長の宮上智志です。
みなさんお身体の調子はいかがですか?現代社会に欠かせない技術はたくさんありますが、特に健康や福祉に関わる医療分野は外せませんね。医療ロボットや遺伝子治療など、日本の医療技術の進歩は目覚ましいものがあります。その一方で、「途絶えさせず継承されてきた医療の型」があるのをご存じでしょうか?それが鍼灸治療です。今回は、鍼灸治療をテーマで記事を書きます。

鍼灸治療とは

鍼灸師の養成機関

鍼灸治療の概要

鍼灸治療は、疾患や症状に適した経穴(けいけつ)ツボなどに金属製の細い鍼を刺入したり、艾(もぐさ)を置いて燃焼させたりなど、生体に刺激を加えることで元々身体に備わっている病気を治す力を高めて元気にする治療法です。鍼(はり)は手で操作することもあれば、微弱な電流で刺激することもあり、施術法は多様です。冷え性の方や、温めることで症状が緩和する身体の状態・症状には灸(きゅう)を使うことが多く、さらに効果を高めるために鍼とお灸を併用して施術することもあります。

東洋医学の考え方と経穴(けいけつ)ツボ

西洋医学では病気の原因に着目し、それを取り除くことで病気を治療するという方法をとります。これに対し東洋医学では、体全体のバランスが崩れていることから症状が生まれ、病に至ると考えます。健全な身体状態では、全身に気(き)、血(けつ)、津液(しんえき)が巡り、身体組織が潤っていることでバランスが保たれています。

  • 「気」体内を流れるエネルギーのことで、元気や気力の『気』という意味をもちます。
  • 「血」文字通り血液のこと。血液が循環して全身に栄養を運び、潤いを与えます。
  • 「津液」血液以外の体内にあるリンパ液やその他の水分のこと。消化や排泄に影響するほか、臓器をスムーズに働かせる潤滑油のような作用もあります。

この、気・血・津液が体内を巡るための通り道のことを経絡(けいらく)と呼びます。そして、経絡の途中にいくつも並んでいるポイントが経穴(けいけつ)ツボです。経絡(けいらく)が何らかの作用で滞ってしまうと、不調の症状が表れます。これを改善するために、経穴(けいけつ)ツボに鍼や灸を施して刺激し、気血の流れをスムーズにするのです。

世界での鍼灸治療の認識

鍼灸治療は、今なお必要とされている医療の型です。日本・中国・韓国などのアジアだけでなく、ドイツ・フランスなどの欧米にも広がり、現在世界100カ国以上で採用されています。世界で最も普及した伝統医療の一つです。1997年には、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が、鍼灸治療の有効性に関する声明を発表しました。

日本鍼灸の歴史

鍼灸の起源は石器時代の中国にさかのぼり、日本に伝わったのは奈良時代です。中国の僧侶が仏典とともに鍼灸の医学書を携えてやってきたとされています。平安から室町時代にかけて、鍼灸や漢方といった中国医学が日本社会に定着し、江戸時代に入ると、鎖国の影響もあり、鍼灸は日本の伝統医学として独自の進化を遂げていきます。その後、世界中の医学に大きな影響を与えた「解体新書」が発表され、明治になると政府の西洋化政策によって、西洋医学が台頭します。鍼灸治療は、伝統医療のひとつして区別され、斜陽の時代を迎えます。やがて、日本は大戦に敗れてGHQ(連合国最高司令官総司令部)の統制下に置かれます。GHQは、医業以外の治療行為を全て禁止する改革を推し進め、鍼灸廃止も計画されました。しかし、すでに庶民の間では民間医療として強い支持がありました。ここで立ち上がったのが、日本の伝統医学の正当性を主張する先達たちです。GHQと交渉を重ね医療としての根拠を粘り強く主張しました。その後、鍼灸の国家資格に関する法律が制定され、免許を取得した者だけが業として行うことができる医療技術になりました。このように幾度となく存続の危機を経験しながらも日本鍼灸は、その医療の型を途絶えさせず継承してきたのです。

鍼灸治療の特徴

日本式の鍼灸治療

日本の鍼は中国の鍼と異なり、非常に細い鍼を使用します。太い鍼の方が効果があるとされていますが、その代わり刺激が強いのが特徴です。日本では、痛みに敏感な人も多いので一般的ではありません。日本の鍼灸では、鍼管(しんかん)を使用するのも特徴です。鍼管は江戸時代に日本のはり師が考案しました。細い鍼と管を組み合わせた鍼治療は、初心者でも痛みを与えずに刺入しやすいため、ほとんどの場合この方法で施術します。さらに、日本の鍼灸では、中国鍼よりも総じて「細くて短い」とされる和鍼(わばり)を使用します。和鍼は痛みが出にくく、美容鍼として使われやすいという特徴があります。

鍼(はり)施術

一定の方式に従い、鍼をもって体の表面の一定部位に、接触または穿刺刺入(せんししにゅう)し、生体に一定の機械的刺激を与え、それによって起こる生体反応を利用し、生活機能の変調を矯正し、保健および疾病の予防または治療に広く応用する施術です。

灸(きゅう)施術

 一定の方式に従い、艾(もぐさ)燃焼させ、またはこれに代わる物質を用いて、身体の表面の一定部位に温熱的刺激を与え、それによって起こる生体反応を利用し、生活機能の変調を矯正し、保健および疾病の予防または治療に広く応用する施術です。
                 ※(はりきゅう理論 医道の日本社 東洋療法学校協会より抜粋)

鍼灸治療で期待できる効果

鍼灸治療は、自律神経系、内分泌系、免疫系等に作用し、その結果として筋緊張の緩和、血液及びリンパ液循環の改善等の効果があります。また、内臓の働きを整え、身体の持つ恒常性維持機能を高める効果が期待できます。その他にも、抗ストレス・鎮痛作用でも鍼灸の効果は期待できると科学的にも証明されています。近年では、むくみや肌質改善などの美容効果を期待した治療も数多く行われています。身体の不調改善の効果が出始めるまでには、症状や施術頻度によって異なりますが、2~3週間ほど経過観察するのが一般的です。

ノーベル生理学・医学賞「温度と触覚の受容体の発見」

2021年ノーベル生理学・医学賞の受賞テーマ「温度と触覚の受容体の発見」をご存じでしょうか?これは、温度と触られたことを感じとる身体の仕組みを科学的に明らかにした功績が認められたものです。灸(きゅう)などの高い熱は、私たちが痛いと感じる温度と近く、痛みは私たちの身体に何かしらの異常が起こったことを知らせてくれます。大きな発見は、神経細胞などの細胞膜にある数種類の受容体(TRPチャネル)でした。これらが特定の温度や物質などに反応して一連の作用を起こし、痛みや電気信号を伝えていることが明らかになりました。この仕組みの解明は、身を守るための様々な反応と関係するとても重要な役割をもっていました。これにより灸(きゅう)の熱が知覚され、身体に作用する機序をより科学的に説明できるようになってきました。
※(日本科学未来館科学コミュニケーター 科学コミュニケーターと楽しむノーベル賞2021 生理学・医学賞 身体の”当たり前”を突き止めた「温度と触覚の受容体の発見」https://blog.miraikan.jst.go.jp/

鍼灸治療の適応疾患

鍼灸治療は、肩こり、腰痛といった代表疾患にとどまることなく、頭痛、風邪、胃腸の病気、下痢・便秘、冷え性、耳鼻科の病気や、自律神経失調症などの精神的疾患、生理痛などの婦人科系疾患、ひいては脳卒中の半身麻痺などの効果が引き出させることも指摘されています。

漢方や鍼灸の適している病気

  • 虚弱体質によるさまざまな体の不調や体力低下
  • 高齢者の老化にともなう種々の症状
  • アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息など)
  • 心身症、不定愁訴、神経症など
  • 自覚症状を主とする痛みや凝り
  • 冷え症、月経不順など
  • 慢性腎炎、慢性肝炎、高血圧、糖尿病など長期管理の必要な病気
  • 現代医薬品の副作用の軽減

漢方や鍼灸は一般に適さない病気

  • 西洋医学の治療の効果が安全かつ確実に期待できる病気
  • 緊急処置の必要が高い病気(急性腎不全、急性心筋梗塞など)
  • ただちに手術を必要とする病気

※(北里大学北里研究所病院 漢方鍼灸治療センター 適応疾患 漢方や鍼灸の向く病気・向かない病気 https://www.kitasato-u.ac.jp/toui-ken/index.html

鍼灸院の選び方

厚生労働省の「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)」(https://www.mhlw.go.jp/)によると、はり及びきゅうを行う施術所は、全国で3万3千か所を超えています。鍼灸で治療するといっても、鍼灸院ごとに得意分野や考え方がそれぞれ異なります。そのため、鍼灸院はどこも同じではありません。それでも、医療を行う施術所は「医療法」で広告できる内容が制限されていますので、どこも同じような看板になりがちです。ですから鍼灸院選びに必要な情報を得るためには、ホームページなどを利用することをお勧めします。最近は、多くの鍼灸院がホームページを持っています。ホームページでは、それぞれの鍼灸院の治療方針や施術内容を案内していますので、ご自身の症状に適した鍼灸院を探してみましょう。

鍼灸治療に健康保険は使える?

はり・きゅうの施術を受けることを認める医師の同意書

鍼灸の施術について健康保険の給付を受けるには、医師の同意書が必要です。特定の慢性疾患で、医療機関において治療を受け、その結果、治療の効果が現れなかった場合に、はり・きゅうの施術を受けることを認める医師の同意がある場合のことです。また同意書の交付後も鍼灸師が定期的に治療経過を医師に報告する必要があります。6か月を超えて引き続き施術が必要な場合は、再同意(文書)の交付が必要です。その他にも、鍼灸の施術を受けている期間は、医療機関で同一病名では健康保険の治療は受けられないという制約があります。鍼灸院によっては、当院のように実費治療専門のところもありますので事前に確認が必要です。

鍼灸治療が保険適応の対象となる疾患

  • 神経痛          (坐骨神経痛、肋間神経痛)
  • リウマチ         (各関節が腫れて痛むもの)
  • 腰痛           (ぎっくり腰なと゛)
  • 五十肩          (肩関節の痛み・腕が挙がらないもの)
  • 頸腕症候群        (首から肩・腕にかけて痺れて痛むもの
  • 頸椎捻挫後遺症      (むち打ち後遺症など)
  • その他、痛みを伴う慢性疾患(腱鞘炎、膝関節痛など)

鍼灸師の資格

鍼灸師の国家資格

鍼灸師とは、「はり師」「きゅう師」の国家資格を取得した施術者のことです。文部科学大臣の認定した学校、厚生労働大臣の認定した養成施設又は都道府県知事の認定した養成施設において必要な知識及び技能を習得した者で、公益財団法人東洋療法研修試験財団が行う国家資格に合格した者に与えられる資格です。鍼灸師は、医療技術職です。資格取得後に治療院などで実際に鍼灸師として活躍するためにも、学校でしっかりと技術を身につける必要があります。

まとめ

日本の鍼灸には、次のような特徴があります。鍼が細い、鍼管を使用する、美容鍼として使用しやすいなどです。これらは、総じて身体にやさしい鍼が施せるように発達しました。また、経絡(けいらく)や経穴(けいけつ)を用いた治療についても、中国から伝わったものを唯一無二とすることなく、臨床経験の積み重ねを基に日本独自の検証を加えていきました。そうした先達たちの研究のおかげで日本鍼灸は進化し、お灸では澤田流太極療法に代表されるような治療理念を確立しています。
日本には医療機関以外に医療を行う施術所として、整骨院(接骨院)、鍼灸院、あん摩指圧マッサージ院が認められています。日本の伝統医療が資格と認められており、柔道整復師、はり師、きゅう師、あん摩指圧マッサージ師が従事しています。その他の業態では、整体院やカイロプラクティック、タイ古式マッサージ、エステ、もみほぐしなども店舗を増やしています。リラクゼーションや慰安、姿勢矯正といった整体術を検討されている方は後者でも十分な効果が得られます。しかし、お悩みの症状に医療の要素が含まれる場合には、国家資格を持った医療従事者がいる施術所をお勧めします。
現代社会は、「人生100年時代」と言われていますが、国民の健康寿命に関する意識は高まりを見せています。働き盛りの若い世代でも、生活習慣の乱れやメンタルヘルス、アレルギー性疾患など、暮らしと健康に関する問題が増えています。
東洋医学では、「聖人は病を治さずして未病を治す」という一節があり、基本的思想を表しています。「素晴らしい医師は病気になってからではなく、健康から離れつつある状態から治療をはじめる」という意味です。ストレス→疲労→免疫力低下→発病と言った負の連鎖を、初期の段階から緩和する病気にならないための予防策としても鍼灸治療は貢献できます。
本院は、神戸市の二天堂鍼灸院中野保先生の元で、しっかりと効かせる鍼灸施術の技術を学び、取り入れております。肩こり・腰痛はもちろん、不定愁訴(原因を特定できないカラダの不調)、身体に関するお悩みなんでもご相談ください。明石市において皆様に頼りにされる「かかりつけの鍼灸師」を目指して、日々研鑽に励んでおります。明石市で鍼灸院をお探しなら二天堂魚住鍼灸院へぜひお越しください。

二天堂魚住鍼灸院