こんにちは。兵庫県明石市の二天堂魚住鍼灸院院長の宮上智志です。
みなさんお身体の調子はいかがですか? 鍼灸治療を受けてみたいけど、どこへ行けばいいのかわからない。特にはじめて方は、どんな条件をもとに治療院を選べばいいのか判断に困りますよね。
そこで今回は、現役鍼灸師である私がおすすめする鍼灸院の選びについて記事を書きます。個人的な意見になりますが、参考にしていただければ幸いです。
はじめての鍼灸院の選び方9つのポイント
①ホームページの内容が深い。わかりやすい。
どこへ行けばいいのかわからない。そんなとき、インターネットで何でも調べることができる便利な時代です。しかし、たくさんの情報の中で自分にあった治療院を見つけるのは、以外と難しいものです。情報化社会では、ほとんどの鍼灸院がホームページを持っています。ホームページには、様々な情報が書かれていますが、見やすいものが一番いいとは思わないでください。自分の知りたいことについて分かりやすく丁寧に書かれているか読んで判断して下さい。見やすいというのは、ホームページ制作業者による仕事も大きく、治療の充実度と比例しない場合があります。鍼灸師自身が患者さんやその家族が必要としている内容を分かりやすくかみ砕いた言葉で丁寧に説明しているか注目して下さい。そこには、鍼灸師の考え方や人柄が反映されています。実際の施術にも関係する治療理念や患者さんとの接し方などを伺うことができます。ネット検索で、上位に出ているというだけでなくある程度は下位のホームページも見ていくべきです。良い治療院が発信している知識の量も見て取れるでしょう。
②屋号は鍼灸院である。
しっかりとした鍼灸治療を受けたいのであれば、「鍼灸院」へ行くべきです。「鍼灸接骨院」では、柔道整復師の施術が中心になります。鍼灸に特化した時間や手間をかけた施術をしているところは限られています。そのため、鍼灸治療の経験値や技量、適応できる疾患の範囲にばらつきが多い傾向があります。その他、身体のゆがみ整え、産後の骨盤矯正・猫背矯正など、あれもこれもとメニューがある治療院よりも、鍼灸治療だけの方が施術内容でしっかりとやってくれます。鍼灸で勝負しようという気概のある治療院を見つけられるでしょう。
③特定の症状をクローズアップしていない。
例えば、エステも交えた美容鍼灸を専門的に行っている鍼灸院では、膝痛や腰痛の専門性は薄いです。このように特定の症状に一点特化した鍼灸院では、相談できる内容も限定されてしまいます。したがって専門外なのでできませんと断られることもあります。長くお付き合いして身体のことなら何でも相談できる治療院をお探しなら、鍼灸治療に特化していても症状は絞っていないところをおすすめします。
④施術経験が豊富である。
鍼灸治療には、知識と技術はもちろんですが経験の豊富さも重要です。一般的な症状である肩こりや腰痛の治療は、網羅されていると思いますが、患者さんが希望している症状に対しての見識が深い方がいいですね。自分の症状がその鍼灸院の施術対象であるか。施術について、事前にホームページや電話で問い合わせできるかも選ばれている治療院の理由の一つです。
⑤理念や考え方がしっかりとしている
治療についての考え方やスタンスは鍼灸師によって違います。それらが納得できることも患者さんには重要ですし、お互いの信頼関係にも繋がります。鍼灸師の治療方針と患者さんの抱くプランがすれ違うことも起こり得ますので、同じ目標に向かって一緒に進んでいく感覚は大切です。自院の治療方針や疾患に対する考え方がしっかりしている治療院は、多少のリスクが伴う場面でも患者さんと価値観を共有していますのでストレスは少ないです。再発を防ぎ根本的な解決を目指すアドバイスをしてくれるのもいい治療院です。原因となっている患者さんの暮らしの背景も気遣いができる適度な距離感を心得ています。
⑥不可能なことには「無理」とはっきり言ってくれる
鍼灸治療の適応疾患は、多岐にわたるので、その全てを網羅するのは不可能に近いです。むしろ、自分にできないことを区別している鍼灸師のほうが、安心して任せられるかもしれません。また、鍼灸では治せない疾患についてはっきりとアドバイスをくれる鍼灸院は信頼できると言えるでしょう。鍼灸師が、脳卒中など緊急性のある疾患の徴候に気づいて、直ちに医療機関をすすめることもあります。医師の診断が必要なケースを見誤らないのも大切なことだからです。
⑦施術担当者が毎回同じであること
鍼灸治療で、経験が重要であることはこれまでにも触れてきました。それは、治療経過を観察することの繰り返しで蓄積されていきます。初診からの症状や体調の変化を、患者さんに聞いてその日の治療内容を組み立てます。鍼灸師の施術は、感覚を研ぎ澄まして臨む職人的要素も強いですから、施術担当者が毎回同じで患者さんのことを理解してくれているほうが説明も省けてストレスが減りますね。
⑧実費治療が適度な金額であること
鍼灸院を受診する方の治療は、1回で終わらないケースがほとんどです。特に、初診の方の治療は、鍼灸刺激への感受性も未知数ですからあえて軽めの内容にとどめて、慣れてもらうことから次回につなげます。その後、数回に分けて治療を進展させて、様子を見ていきます。また、一通り症状が改善した方も予防的な効果を期待して、定期的に通い続けることがあります。ですから、ある程度の期間や回数を通うことを前提にして、納得ができる金額の治療院を選ぶべきです。また、施術する部位が増えるごとに追加料金が発生したり、鍼や灸をするごとにオプション料金が細かく設定がされている治療院は、合計でいくらの施術になるのかが事前にわかりにくいです。個人的には、「1回の施術でできるだけの治療を、目安となる時間の範囲内で行います。1回の料金は定額です。しばらく通う方にはお得な回数券があります。ご希望の方はどうぞ。」といったわかりやすい料金体系がいいと思っています。また、鍼灸適応疾患でも記事にしましたが、ご自身の症状の程度によって、実費治療と保険診療を使い分けるなど、経済的負担を少なくするのも必要なことです。
⑨ゆとりを持って通える範囲内であること
通院するのも交通費がかかります。数回に分けて治療してようやく経過観察という流れが一般的です。評判がいい治療院といってもあまりに遠方となると大変です。できれば通勤や通学の途中などに立ち寄れる程度のほどよい距離にあることが望ましいです。また、治療の前後に時間のゆとりが持てるのが理想です。私は、鍼灸院の治療は、静養や休養の意味合いも含まれていると思っています。鍼灸刺激がきつくならないように落ち着いた空間で、ゆっくり時間をかけて染み渡らせるイメージです。鍼灸治療では、治療を受けながら患者さんが眠ってしまうことははめずしいことではありません。交感神経系優位の状態が変調して、副交感神経系の活性が高まれば身体はリラックスモードに変わります。ですから忙しさに急かれることがないように、ゆとりを持って予約ができる距離の範囲内をおすすめします。また、大切にしたい趣味などの時間を削って、通院にあてないようにしましょう。なぜなら「大切にしている趣味」は、あなたにとってセルフケア効果(症状をコントロールするための方法)を果たしているからです。これについては、また別の機会に記事にします。
鍼灸治療の内容や効果について詳しくまとめたページもございます。鍼灸とはの記事もぜひご覧ください。
まとめ
冒頭にも触れましたが、私の鍼灸の師匠は、鍼灸治療の書籍も出版しています。そして、患者さんへ説明する場合の言葉遣いや表現の仕方も、理路整然として洗練されています。整理整頓された院内環境やBGMの嗜好まで落ち着いた雰囲気を演出しています。私自身のお手本にしていますし、今回の記事ではじめての鍼灸院選びのモデルとして参考にしています。しかし、唯一例外なのが、非常に遠方からも患者さんが来ていることです。それはなぜかというと、お分かりですね。しっかりと効かせる鍼灸治療が患者さんに選ばれているからです。ある初診の方の問診に立ち会わせていただいたとき、患者さんが「本まで出版して、鍼灸師の技術講習も主催している立派な先生を頼って来ました。家族がホームページを見て勧めてくれました。」と言って中国地方から何時間もかけてやって来た経緯を説明してくれました。心配する娘さんの付き添いがあってこそ通院ができるつらい症状のようです。近県の鍼灸院で治療を受けたそうですが、期待するような効果が得られなかったそうです。まだ勉強会に通うようになって日も浅いころの問診の見学だったので驚きました。しかも支払いは迷わずお得な回数券を買っています。患者さんは、多少の無理をしてでも来院して来るのです。鍼灸治療は、まだまだ世間に認知されていません。みなさんの身近な医療になれるように情報発信が必要です。患者さんに選ばれている鍼灸院はみなさんのお住いの地域にもきっとあります。今回の記事を参考にしていただければ幸いです。