Blog更年期症状の鍼灸治療

2025-03-29

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更年期症状の鍼灸治療

こんにちは。二天堂魚住鍼灸院の宮上智志です。今回は、更年期のお悩みと鍼灸治療について記事を書きます。更年期とは、閉経の前後5年ずつ、約10年間の時期を指し、この時期に心身の変化があらわれることをいいます。更年期の自覚症状を主訴に、来院する方もめずらしくありません。みなさんにとっても身近な問題のはずです。当院では、更年期の症状も鍼灸施術の適応疾患として治療いたします。

更年期の主な症状

  • ほてり、のぼせ、冷え、発汗などの体温調節の不調
  • めまい、だるさ、不眠、イライラ、気持ちの落ち込み、意欲の低下などの精神的な症状
  • 月経周期の乱れ(月経が短くなる、一部が無排卵月経になる、月経が2〜3ヵ月に1度になるなど)

更年期の関節痛について詳しくまとめたページもございます。「メノポハンド」とはの記事もぜひご覧ください。

自律神経の不調

更年期は人の一生のひとつの時代を指すものなので、男性にも女性にもあります。「いわゆる加齢現象」のひとつです。男女ともにホルモンが減少していくことでホルモンバランスが乱れ、心身に変化をもたらします。更年期に起こる自律神経系の不定愁訴を更年期症状(障害)と言います。ですから自律神経失調症と診断されたり、軽度うつ病や不安障害といったメンタルヘルスの不調も指摘されます。

自律神経の大きな役目は、循環器(心臓と血管)のコントロールです。言うなれば、血流低下症状を招いているのが自律神経失調症です。自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスで成り立っていますが、この乱れを整えて、体全体の血流を改善していくことが、症状緩和には効果的です。

更年期に対する東洋医学の考え方

古代から伝わる東洋医学は、人体の現象と自然現象を照らし合わせて体系化し、伝統医学として受け継がれてきました。現代医学は、科学的人体論といいましょうか。細分化してカテゴライズする医療が発達していますが、東洋医学はその対極です。あらゆる生命現象を包含し、渾然一体となって機能する総合的人体論です。現代は、薬による治療が一般化され、その恩恵はすばらしいものがあります。しかし、薬には作用方向があり、人体に対する操作性が高いため、副反応も大きくなります。しかし、鍼灸の施術には、作用方向がありません。体調に応じて双方向性に働き、鎮静にも興奮にも作用するのでバランスを回復します。当然、薬と比べて操作性も低く、ほとんど副作用はありません。これは現代医学に対する大きなアドバンテージです。伝統医学は、現代医学の病名をターゲットにしていません。どんな病気でも生体機能を賦活して、元気を引き出すことで治癒に貢献します。ですから、頭痛や肩こりの局所治療であっても身体全体への波及効果があり、様々な症状が改善します。当院の基本治療が目指す「全身の調整作用を高め、元気を引き出す治療」は、複雑な更年期の不定愁訴に対しても効果的を発揮します。

鍼灸施術の方針

施術は、3つのエリアで治療を組み立てます。伏臥位、仰臥位で行い、それぞれ15~20分は置鍼して、低周波鍼通電療法なども交えて行います。

①体幹部

体幹には、胸髄と腰髄から出る交感神経系があります。鍼灸の施術で、体性内蔵反射あるいは内蔵体性反射を導き出します。これにより、内科や自律神経の疾患にも調整作用は働きます。また、固有背筋の支配神経である脊髄神経後枝の緊張を緩和します。肩こりや腰痛も同様に、治療されます。

②四肢

肘、膝から先の経穴(けいけつ)、ツボを使います。四肢への刺激は、センサーとして感度が高い場所なので脳への影響力が大きいと考えられています。そして、脳で受容された鍼灸施術の刺激により、内分泌系に反応が起こります。セロトニンなどの脳内伝達物質が分泌され、全身性に調整作用を高めます。また、オピオイド(モルヒネ様物質)の分泌による下行性痛覚抑制系が機能し、疼痛緩和の効果が得られます。

③頭部

頭部の鍼は、経穴(けいけつ)、ツボを使い、頭皮に置鍼(ちしん)します。ここでのターゲットは、大脳皮質区の前頭前野を投影したエリアです。人間を人間たらしめる「思考」を司る部位です。ここを刺激して、更年期のストレス脳へダイレクトなアプローチを試みます。また、頭部には副交感神経含む脳神経があります。それらを刺激して副交感神経に働きかけることで、脳本来のリラックス効果を喚起し、精神作用の安定も期待できます。

参考書籍 「実用鍼灸治療学 鍼灸師のためのABC理論」 著者.中野保著 発行者.安井喜久江 発行所.たにぐち書店 2023.4.12発行 
「女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン」 著者.やまざき あつこ鍼灸師 文・取材.鳥居りんこ 発行者.下山明子 発行所.株式会社 小学館 2022.3.30発行

まとめ

血流をよくする鍼灸治療は、更年期を含む自律神経失調症には力を発揮します。患者さんの訴えに耳を傾け、できるだけリラックスした状態を演出し、鍼灸の施術で気持ちよくなっていただけるように努めます。繰り返し施術を行うことで、不調の波を緩和して穏やかに過ごすためのお手伝いをします。更年期障害は、「体質的な要因」「ストレス抵抗力」「そのときの環境」などの要素が複雑に絡み合って発症します。鍼灸は、このうちの「体質的な要因」を補完し、「ストレス抵抗力」を高めるなどの効果で治療に貢献できると考えます。不快な症状も「ついに来たか・・・。人生のこのステージをいかにやり過ごすか。」といった感じで落ち着いて迎えられるような心の準備ができていれば混乱は最小限にとどめることができます。しかし、前述した「そのときの環境」は待ったなしです。例えば、仕事、育児・家事、夫婦の関係、介護などなど、生活を取り巻く環境はどれもなかなかのミッションです。きまじめな方こそ、忍耐強く頑張ってしまいます。特に、女性は体の構造もメンタルも複雑です。男性には理解できないことも多く、苛立ちを覚えることもあるでしょう。また、日常的に女性が演じているいくつもの役割が、大変な重荷になって押し寄せるようこともあると言います。ですから施術者も、患者さんのそのときの感情も含めて統合的に診る「全人的医療観」を養う必要があります。私は、まだまだ未熟者ですが、幸いなことに東洋医学には人間の営みに根付いた教えもたくさんあります。人の感情、情緒の乱れも許容範囲を超えると、臓腑や気血の機能が失調し、病に至ると説いています。身体に負担をかけている方は、養生に加えて時々は私たち専門家に不調を見つけてもらい解消していきましょう。古くて新しい伝統医療のよいところも取り入れて、みなさんの「更年期」を乗り越えるお手伝いに力を注ぎたいと思います。

二天堂魚住鍼灸院