Blog腰痛に効く鍼灸治療

2025-01-16

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腰痛に効く鍼灸治療

こんにちは。兵庫県明石市にある二天堂魚住鍼灸院の宮上智志です。今回は、腰痛について記事にします。腰痛の治療に、鍼灸施術は非常に高い効果を発揮します。腰の痛みとトラブルの発生源は、主に腰まわりの椎間板、関節、筋肉のどれかに絞られます。なかでも椎間関節は、ぎっくり腰の誘因になりやすいです。筋肉では、背骨に沿って走る脊柱起立筋が主にトラブルを起こしやすいです。

椎間関節性腰痛

椎骨が24個連なり脊柱を構成しています。椎骨同士の連結は、後ろ側にある椎間関節が担っています。ヒトは2足歩行ですから立っているだけでも脊柱の下部、腰椎には負担がかかります。さらに、スポーツなどで過度な刺激を与えたり、不意の動作で負荷がかかると椎間関節が炎症を起こし、侵害受容器がそれをキャッチして腰痛が発生します。腰を斜め後ろに反らせると痛みが生じるのが特徴です。

筋筋膜性腰痛

腰椎周辺の筋肉および筋肉を包み込む筋膜が炎症を起こし、いわゆる「肉離れ」のような状態に陥るのが筋筋膜性腰痛です。不良姿勢やスポーツによる急激なストレスがきっかけになります。痛みが生じると前傾をとりがちになるため、ますます背筋が緊張になります。さらに、お腹に力が入っていないときにいきなり動くと急性ぎっくり腰を引き起こすことになります。

椎間板性腰痛

患部は、椎骨と椎骨の間にある椎間板周辺です。椎間板は、髄核という中心部分を線維輪という組織が取り囲む構造の背骨のクッションです。椎間板は、30代以降内部の水分が徐々に減り、硬く変性していきます。変性が進むとその周辺に炎症が起こり、発痛物質などが分泌されます。それらによって毛細血管や小さな知覚神経が誘導されて痛みが感じられます。痛みを感じるのは、もっぱら前屈みの姿勢をとったときです。

仙腸関節性腰痛

仙腸関節は骨盤の中心にある仙骨とその両側にある腸骨のジョイント部分です。そもそも靭帯でがっちり固められているので脊柱の椎間関節のような可動性はなく、どちらかという動きにくい構造です。それでも負荷がかかったり加齢で関節が変性すると不具合が起こります。関節部分に繰り返し負荷がかかって周囲に炎症が起こっています。骨盤が患部なので腰ではなくお尻が痛むのが特徴です。

参考資料:著者名.鈴木秀典.山口大学大学院医学系研究科整形外科准教授、腰痛は自分で治せる、「Tarzan No.860 腰痛は自分で治せる。」.出版社マガジンハウス,出版2023年7月27日、P10~41

脊柱の機能的安定性(モーターコントロール)

腰などの関節の安定性は、「機能的安定性」(モーターコントロール)と「構造的安定性」の二つで担っています。機能的安定性(モーターコントロール)とは、負担の少ないニュートラルゾーンの範囲内で動けるように、筋肉で制御する仕組みです。これが上手くいかないと、関節周辺の靭帯や関節包といった構造的安定性に頼るほかありません。その結果、関節まわりにダメージが蓄積し、有痛性肉芽が形成されてぎっくり腰が起こるのです。有痛性肉芽などの痛みは、組織の修復のために安静にしなさいという身体からのメッセージです。修復が終われば、有痛性肉芽もやがて消失します。ところがリカバリーを終える前に、刺激を加え続けると、有痛性肉芽はいつまで経ってもなくなりません。それが地雷のように筋肉や関節に潜んでいると、よくない動きで有痛性肉芽を刺激して大爆発を起こします。これが腰痛をぶり返す原因です。

※有痛性肉芽・・・ケガや炎症などが起きたところを身体が修復する際に、生じた粒状の組織。血管と共に神経が通っていて、刺激すると痛む。

フィードフォワード機構

機能的安定性(モーターコントロール)の鍵を握るのは、身体の深いところで関節の動きを制御している深層筋(インナーマッスル)です。身体の表層の筋(アウターマッスル)は、パワフルなのが特徴です。本来は、深層筋(インナーマッスル)が少しだけ先に働いて関節を安定させてから表層筋(アウターマッスル)が動く仕組みがあります。これをフィードフォワード機構と言います。ところが深層筋(インナーマッスル)が衰えたり、緊張やストレスで表層筋(アウターマッスル)が動きやすくなっていると、フィードフォワード機構が上手く機能せずに、構造的安定性を支える関節まわりのダメージとなります。

参考資料:著者名.川口善治.富山医学部整形外科教授、金岡恒治.早稲田大学スポーツ科学学術院教授、なぜ?なに?ギックリ腰、「Tarzan No.860 腰痛は自分で治せる。」.出版社マガジンハウス,出版2023年7月27日、P59~63

鍼灸施術の方針

ターゲットとなる筋肉に鍼施術、お灸で患部を温める

椎間関節性腰痛・・・大腰筋、脊柱起立筋など

筋筋膜性腰痛・・・脊柱起立筋、腰方形筋、広背筋、中殿筋、大殿筋、胸腰筋膜など

椎間板性腰痛・・・大腰筋、脊柱起立筋、ハムストリングなど

仙腸関節性腰痛・・・殿筋群、外旋筋群、内転筋群、下腿三頭筋など

各筋群の施術に用いる経穴は、坐骨神経痛についてまとめたページと同じです。坐骨神経痛の鍼灸治療の記事もぜひご覧ください。

まとめ

ぎっくり腰は医学的な病名ではありません。「ぎっくり」とは、急に痛くなることを表している擬態語です。整形外科的には、急性腰痛の一種です。腰痛治療のガイドラインでは、痛みが起こって1か月未満を急性腰痛、3か月以上経つものを慢性腰痛と分類します。ぎっくり腰は、レントゲンやMRIといった画像診断では、異常が写らないことがほとんどです。そのため、かつては非特異的腰痛(原因の特定できない)は、全体の85%と言われる時代もありました。しかし、近年では腰痛研究が発展したおかげで一般的な腰痛は特異的腰痛(原因が特定できる)として全体の78%を占めるという報告がみられるまでになりました。しかし、特異的腰痛には、重大な脊椎疾患である腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどが含まれていますから手術をしなければよくならない腰痛もカウントに入ります。癌の脊椎転移や化膿性脊椎炎、胸腰椎圧迫骨折など、「レッドフラッグ」と言われる重大な疾患の徴候が見られる場合には、医院での治療が必須です。

臨床では、患者さんの声に耳を傾けて、症状の理解につながるヒントを探ります。特に医院で治療を受けてもなかなかよくならない難治性慢性疼痛の方が来られることが多いのが鍼灸院です。鍼灸治療は、手術以外の方法で脊柱周辺の深層筋(インナーマッスル)に直接アプローチすることができる唯一の方法です。当院では、夾脊(きょうせき)という固有背筋群の治療に効果が高い経穴に施術をします。多くの場合、固有背筋の慢性疲労は、脊柱の安定を担っている大腰筋にも波及し、硬結化がすすむと思われます。ですからインナーマッスルである大腰筋に対しても3寸の長い鍼を使って施術します。大腰筋は、股関節を屈曲するときに働く最大の筋肉です。腰の姿勢筋であると同時に、下肢のムーブメントの筋肉として重要な役割を持っています。腰部では、大腰筋が腰椎の前弯の形成、また骨盤部においては腸骨筋と合体して腸腰筋となり、骨盤の前傾に大きく関与します。腰椎と骨盤は、脊柱の土台であり基部です。ここが適正でなければ、それに続く胸椎、頸椎の生理的弯曲も整いません。つらい腰痛でお悩みの方は、医療的代償で姿勢にも影響が出ています。医療的代償についてまとめたページもございます。医療的代償の記事もぜひご覧ください。当院では、単に痛みの緩和を目標に施術するのではなく、身体全体にいい影響が出る「元気になる治療」を目指しています。明石市で”かかりつけの鍼灸師”として、皆様の健康をサポートします。

二天堂魚住鍼灸院