Blog鼠径部の痛み(グロインペイン症候群)の鍼灸治療

2025-02-17

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鼠径部の痛み(グロインペイン症候群)の鍼灸治療

こんにちは。二天堂魚住鍼灸院の宮上智志です。今回は、鼠径部の痛み(グロインペイン症候群)について記事を書きます。鼠径部とは、太もものつけ根のくぼみから少し上にある三角形の部分です。下腹部にある恥骨の左右外側の部分で、股関節の前方になります。主に、サッカー、陸上競技の中・長距離、ラグビー、ホッケー、ウェイトリフティングなどの選手に多く発生します。鍼灸治療は、慢性化した鼠径部(そけいぶ)の痛みに効果のある施術ができます。

鼠径部の痛み(グロインペイン症候群)

 鼠径部の圧痛、運動時痛、大腿内側(内転筋付着部)から下腹部にまで放散する疼痛が主訴です。特に下肢を伸展して挙上、外転する動作で誘発されやすく、股関節の可動域制限、筋力低下が見られます。キックや急な加速・減速などのスポーツ動作で酷使されることが多く、過緊張や炎症が股関節や鼠径部の痛みを引き起こします。また、股関節周辺にタックルを受けた場合などの打撲症でも発生することがあります。

鍼灸施術の方針

治療のメインターゲットは、股関節を屈曲させる腸腰筋です。腸腰筋とは、体幹の深部に位置する腸骨筋と大腰筋を合わせた総称です。腸骨筋は骨盤から起始し、大腰筋は脊柱から起始します。筋腹は途中で重なり骨盤前面の恥骨隆起上を通り、そこから後方に湾曲して太ももの付け根に停止します。大腰筋刺鍼は、背部兪穴(はいぶゆけつ)のラインかL4-L5間、L5-S間、L3-L4間、L2-L3間の順に、3寸の長い鍼を使って行います。大腰筋は、腰神経叢支配なのでその延長で延びる鼠径部や下肢の神経に刺激が放散します。また、大腿神経(大腿四頭筋)や閉鎖神経(内転筋)の領域に出る確率が高く、この領域の治療にも有効です。直立時に骨盤を支えている中殿筋、小殿筋にも3寸の長い鍼を使って刺鍼します。股関節の運動に関わる殿筋群にも適宜刺鍼します。腸骨筋の施術は、仰臥位で腸骨の全面外側に対して3寸の鍼を使って行います。

直立二足歩行の代償

腸腰筋は、上半身と下半身を繋ぐインナーマッスルで、股関節のダイナミックな動きだけでなく、姿勢の保持にも関わっている重要度が高い筋肉です。特に、四足歩行の動物の場合、腸腰筋のニュートラルポジションは股関節90度です。非常に機能しやすく、速やかに後ろ足を前に運ぶのに役立ちます。しかし、人類は直立二足歩行になったことで、股関節を体幹に引き付ける動作において非常に不利な状態になっています。ですから歩行では大腿の筋肉をメインにはたらかせて腸腰筋は、直立姿勢を維持する役割が強くなっています。最近では、ボディーケアやスポーツトレーニングの分野でも、解剖学の知識を取り入れた説明やトレーニングが盛んに行われています。ニュースでよく取り上げられているプロスポーツ選手のシーズンオフの「自主トレ」では、身体の柔軟性を高める運動や体幹の筋力強化が行われています。現場に立ち会ったわけではありませんが、腸腰筋などのインナーマッスルを鍛えているのは間違いありません。一般人も運動を楽しむアスリートとして、パフォーマンス向上と怪我の予防に備えて、人体の要となるポジションをケアするのは必要なことです。脊柱の機能的安定性(モーターコントロール)について詳しくまとめたページもございます。腰痛に効く鍼灸治療のページも是非ご覧ください。

まとめ

鼡径部の痛み(グロインペイン症候群)は、よく運動する人に多い傾向があります。初期には歩いたり走ったりすると鼡径部に痛みや違和感が出ます。これが重症化すると、安静時にしていても症状が出ます。「太ももを挙げると鼠径部につまったような違和感がある。」と訴える人も多いです。これは言わば使い過ぎ症候群です。プロスポーツ選手や職業柄身体を酷使する方は、ある程度仕方ありませんが、一般人にとってはオーバートレーニングに対して身体が悲鳴をあげている状態です。注意が必要です。走る運動が多いスポーツやダンスなど身体の柔軟性を求められるパフォーマンスでは、腸腰筋をよく使います。筋肉は疲労が蓄積すると柔軟性が損なわれ、十分に伸縮できなくなります。その状態で動かすとストレス部位には圧力がかかり摩擦係数が上昇し炎症が発生しやすくなります。

故障については、運動や作業の内容を軽くするか、休養して回復に努める期間を設けましょう。また、治療のタイミングが遅れるほど治癒にも時間がかかります。早期に鍼灸治療を行うことで、日常生活での痛みについては、速やかに緩和できます。当院では、長い鍼を使って、脊柱の前側に付くインナーマッスルに刺激を入れる「大腰筋刺鍼」の施術を行います。ただし、股関節の疾患などが原因で長い間代償動作をとっている場合には、全身のバランスが複雑に絡んでいるケースも少なくありません。根気強く治療が必要です。しかし、鍼灸施術を取り入れて、柔軟体操などを併用することで必ず治療期間の短縮が図れます。鼠径部の痛み(グロインペイン症候群)でお困りの方は、是非当院にご相談ください。

二天堂魚住鍼灸院