こんにちは。兵庫県明石市の二天堂魚住鍼灸院院長の宮上智志です。
みなさんお身体の調子はいかがですか?つらい症状でお悩みの方に鍼灸の力で少しでも楽になってもらいたい。そんな思いで日々臨床に立っています。よく皆さんから鍼灸って、「痛いんじゃないの?」「熱いんじゃないの?」と質問されることがあります。今回は鍼灸の施術について具体的に説明します。
鍼灸治療の施術
前揉法と後揉法について
前揉法(ぜんじゅうほう)とは、鍼を患部に刺入(しにゅう)する前に皮膚を軽く揉んでほぐすことで、筋緊張を緩和させリラックスする効果があります。これにより患者さんは、チクッとする鍼の刺激を受け入れやすくなります。また、前揉法を広い範囲で行い、筋緊張の深さや身体の癖・歪みを確認する触診に用いることもあります。東洋医学では、気血(きけつ)の滞りが原因のひとつと考えますから、前柔法を通して経絡(けいらく)上の経穴(けいけつ)ツボに何らかの反応が出ていないかを探るのも必要なテクニックです。続いて、鍼を抜く抜鍼(ばっしん)後に行うのが、後揉法(こうじゅうほう)です。後揉法には、鍼による患部の出血や痕の防止、痛みや違和感の緩和などの効果があります。
鍼(はり)施術について
鍼灸で使用する鍼は、注射針とはまったく異なります。かなり細く造られています。(長さ約15mm~90mm、太さ直径約0.10mm~0.30mm)鍼灸師の技量にもよりますが細い鍼は皮膚に刺しても、ほとんど痛みを感じません。しかし、完全な無痛ではありません。筋肉が凝っている部分に鍼が当たると、ズンと重い、鈍い刺激感が生じます。専門的には”響き”といいます。また、凝っている筋肉が鍼によってほぐれてくると、電気が流れるように感じる場合もあるでしょう。これは鍼灸が効いているということなので、慣れればきっとリラックスして施術を受けられます。刺入には、鍼管(しんかん)と呼ばれる金属もしくはプラスチック製のストロー状の管を用います。鍼管からわずかに出た鍼の柄の部分を軽く叩くことにより鍼の刺入を容易にし、かつ患者さんにはほぼ痛みを感じさせることなく刺入できる日本独自の方法です。次に、皮膚を通過した鍼は適切な深さまで体内に刺入されますが、その際、鍼灸師によって手技が加えられます。手技には、目的の深さまで刺入して鍼を上下に動かす雀啄術(じゃくたく)や刺入した鍼をそのまま10~15分間とどめておく置鍼術(ちしん)など、様々な技法があります。
灸(きゅう)施術について
灸とは、艾(もぐさ)を用いて体表面に熱刺激を加える方法で、「やいと」と呼ばれることもあります。その方法は、艾を直接皮膚上で燃焼させ灸の痕(あと)を残す有痕灸(ゆうこん)と、灸の痕を残さない無痕灸(むこん)の大きく2つに分けられます。このような皮膚上で艾を燃焼させる灸の施術法は、昔から日本で盛んに行われてきた民間療法で、松尾芭蕉が奥の細道で足三里のツボに灸をすえながら旅をしたことはとても有名です。しかし、現代の日本では、灸の痕ができることから敬遠されがちですが、免疫活性に非常に効果のあることが証明されています。
無痕灸には、米粒ほどの艾を直接皮膚上で燃焼させ、患者の気持ち良い熱さで消火あるいは艾を取り除く知熱灸(ちねつ)、艾を皮膚から距離を置いて燃焼させ、輻射熱で温熱刺激を与える温灸(おんきゅう)、皮膚上に生姜・にんにく・味噌・塩などの介在物を置き、その上で艾を燃焼させる隔物灸(かくぶつきゅう)などがあります。その他、せんねん灸やシールを剥がすと発熱材が温かくなる灸なども市販されています。
補助的な治療法について
鍼灸院によっては、遠赤外線や赤外線レーザーを用いた治療機器、低周波通電器、吸い玉、テーピングなどを用いた治療、運動療法や食事療法などを含めた生活全般のアドバイスを行なうこともあります。
当院では、【マイクロカレント】での鍼通電治療も行います。(セイリン社・ピコリナ)
マイクロカレントは微弱電流を意味し、人間の身体に流れる生体電流に近いレベルの電流です。
好転反応について
施術後に運動後の筋肉痛のような症状がでることがあります。これは、鍼灸の効果で筋肉の固まりがほぐれることで血流や老廃物の流れが良くなり、圧迫されていた神経も解放されたため生ずる”好転反応”です。体の症状が長期化したことで痛みの感覚が鈍化や麻痺していた場合、回復の過程でも今までにない痛みの感覚やだるさを伴うことがあります。他にも眠気や疲労感を感じる人もいます。体質や治療の経験値によって症状は様々ですが、これは体がよくなっている反応です。半日~翌日には消失します。ご安心ください。
鍼灸院の選び方や健康保険などについて詳しくまとめたページもございます。鍼灸とはの記事もぜひご覧ください。
まとめ
西洋医学が主流の日本では、残念ながら鍼灸治療は誰もが経験するほど一般化していません。はじめての鍼灸治療を検討中の方には、わからないことだらけですね。たとえ髪の毛ほどの細さでも「身体に鍼が刺さることへの抵抗感」や「お灸をすえる=きついのイメージ」が先立つのでためらいがちになりやすいのも理解できます。そのため、つらい症状を何とかしたい方の最後の選択肢になりがちです。実際に患者さんの多くが、医療機関やマッサージ・整体院に行ってもよく治らないと言って、鍼灸院に来られることがあります。患部に届く鍼の刺激は、体表からのアプローチが及ばない領域まで施術することが可能です。特に当院は、大腰筋鍼刺などインナーマッスルまで届かせる深鍼も交えた治療を行います。長い歴史のある鍼灸治療は、他にも数多くの手法があり、そのための道具もそれぞれあります。美容鍼灸はもちろん、刺さない鍼治療(皮膚を摩擦・接触・押圧する)の専門家や、小児はりなど幼児向けのとてもやさしい治療もあります。また、治療理念や解釈も同様でいくつかの流派も存在します。それらを一人の施術者がすべて網羅することは不可能です。ですから鍼灸院の施術はみんな同じではありません。ホームページなどであらかじめ治療内容を確認したり、問い合わせするのもいいでしょう。個人的な意見ですが、鍼灸師は、みなさんとても患者さん思いでやさしい性格の方が多いです。例えば、前柔法や後柔法などの身体にとって受け入れやすい治療のテクニックも心得ています。お薬の処方に「匙加減」という表現がありますが、それと同じように患者さん一人一人に合わせた鍼灸刺激を調合してくれるはずです。「思い立ったが吉日」。今回の記事が、鍼灸治療をどうしようかためらっている方にとって、踏み出す最初の一歩を後押しできれば幸いです。